チャレンジャーを支える人事・組織戦略—HRize代表が描く、人と組織の未来図
株式会社HRizeは、2024年6月に立ち上げたばかりの企業です。人事・組織戦略の策定から実行までを一気通貫で伴走する「人事パートナーサービス」を提供しています。
今回は、大手重工メーカーで10年、そしてスタートアップ2社での私の経験、そして当初は憂鬱だった人事という仕事が、私にとってなくてはならないものへと変化し、HRizeの起業につながっていった過程をお話ししたいと思います。
人事との出会い、そして「深み」への気づき
人事という仕事との出会いは、全くの偶然でした。元々は営業志望だった私が、新卒で重工メーカーに入社した際に配属されたのが人事部だったのです。正直なところ、当時の私は人事には全く興味がなく、むしろやりたくないと思っていたくらいです。
入社当時、私は指導員から「深みを持て」という言葉を繰り返し聞かされました。最初から浅く広く仕事をしてしまうと、後から深みを出すことは難しい。だからこそ、若いうちから一つの仕事を深く掘り下げる経験を積むことが重要なのだと教わりました。担当業務を徹底的に掘り下げる中で、私は人事の「深み」を理解していったのです。
そして、入社して6年目くらいになってから、3人チームで年間300人もの新卒採用を行うという、非常に難易度の高い人事業務を担当することとなりました。どうすれば優秀な学生を採用できるのか頭を悩ませ、様々な手法を試行錯誤する連続の日々でした。
重工メーカーでの人事を担当した後はスタートアップ企業に転職し、人事全体を俯瞰する立場になった時にそれまでバラバラに見えていた人事の仕事が、実は一つの大きなシステムとして繋がっていることに気づきました。それぞれの業務の「深み」を理解していたからこそ、全体像を把握した時に人事の面白さ、そしてその奥深さに初めて気づけたのだと思います。人事システムの全体像を理解し、各機能の業務の繋がりを把握していること。これが私の強みだと確信しました。
起業という挑戦、そして新たな壁
スタートアップで経営者と共に働く中で、私は経営者支援の必要性を強く感じるようになりました。経営者たちは社会をよくしたい、未来を変えたいという強い思いを持って、日々挑戦を続けています。そんな彼らを凄いなと思いますし、人事の面で支えていきたいと考えるようになりました。
事業を成功させるためには、人事・組織戦略が不可欠です。優れた経営者であっても、人事や組織の課題に直面し、苦悩している姿を目の当たりにしました。彼らを支えたい、彼らの挑戦を成功に導きたい。そして、ずっと感じていた「自身が経営をしたことがないのに、人事として経営者を支援できるのか?」 という疑問に答えを出すために、いま起業するしかない、と決心しました。
そして起業から半年が経ち、私はフリーランスとは全く異なる、経営者としての難しさに直面しています。フリーランスは自身のスキルを積み上げ、それを収益に繋げます。いわば「積み上げ」の思考です。一方で経営者は社会全体のニーズを捉え、組織として課題解決を目的とし、そのために必要なリソースを確保し、組織を率いていく必要があります。
社会全体を視野に入れ、そこに存在する課題に挑戦していくためには、大きなリスクを伴う意思決定をしなければなりません。他者を巻き込み、組織として動いていくためには、自分自身のビジョンに共感してくれる仲間を集め、彼らと共に未来を切り開いていく必要があるのです。
HRizeのミッションと、4つのスタンス
こうして立ち上げたのが、HRizeです。私たちのミッションは、「チャレンジャーが背中を預けられるHRシステムを提供する」こと。挑戦する経営者たちが安心して事業に集中できるよう、人事という側面から力強くサポートしたいと考えています。
私が考える人事戦略は、以下の4つのスタンスに基づいています。
- 企業はお金があってなんぼ:
スタートアップで経験した資金繰りの難しさから、企業経営におけるお金の重要性を痛感しました。正しいチャレンジには必ず資金が必要になります。
人事はよく「お金に繋がらない」間接部門と言われますが、だからこそ利益を意識した人事戦略が必要であると考えています。 - 感情論はいらない:
人事の現場では、感情論に流されて適切な判断ができなくなるケースがよくあります。人事にとって『人間の感情のみ』に重点をおくことは、時に組織にとってマイナスな施策を生み出してしまうことがあります。極論をいうと、業績不振の会社が「従業員を大切にしたい」という感情から解雇の時期が遅れてしまい、結果として会社が倒産して誰も大切にすることができなかった、というケースも起こり得るのです。私は、感情ではなく、客観的なデータや事実、そして経営全体の状況を踏まえたシステムに基づいて、人事の課題を解決していくべきだと考えています。 - 制度は運用してこそ輝く:
どんなに素晴らしい人事制度を設計しても、運用できなければ意味がありません。人事制度は、作って終わりではなく、運用し、改善していく中で初めて効果を発揮します。私は、クライアント企業の現場に入り込み、人事制度の運用をサポートすることで、制度を「絵に描いた餅」に終わらせず、実際に機能する仕組みへと変えていきます。目標管理を例に挙げると、多くの企業では目標を設定し、それを個人の評価に繋げて終わります。しかし、目標管理には「会社全体として追うKGI・KPIの妥当性を検証する」機能があり、経営戦略に直にフィードバックできるものなのです。私は、このフィードバックループを構築し、PDCAサイクルを回していくことで、人事制度を継続的に改善していくサポートをしています。 - できない約束はしない:
私は、クライアント企業に対して、実現不可能な約束をすることはありません。時には耳の痛い話をすることもあるでしょう。しかし、それが外部パートナーとしての役割だと考えています。綺麗事を並べるのではなく、現実的な視点から課題を分析し、最適な解決策を提示することで、クライアント企業の真の成長に貢献したいと考えています。
人事という仕事は“人”という解明し尽くされていないものに向き合うため、一つの課題に何通りもの向き合い方があると思っています。
だからこそ、『HRize』が大事にしたいスタンスを少し尖った形で具現化したのがこの4つのスタンスなんです。
社会を変えたい、世界をかえたいといっている経営者はとても素晴らしいのですが、利他的な方が多いと思っています。
利他とお金儲けを両立させるまでは時間がかかるものです。だからこそ、中長期で見た人事戦略が重要になると考えています。
人事の真髄、そして未来への展望
私は、人事という仕事を「経営をうまくいかせるための大きな手段」だと捉えています。人事・組織戦略は、企業の成長を左右する重要な要素であり、適切な戦略を実行することで、組織の活性化、生産性の向上、ひいては企業全体の業績向上に繋げることができます。
先ほど述べた4つのスタンスは、あくまでもお客様にHRizeの考え方を分かりやすく伝えるためのものです。人事は、もっと多様な側面を持つ仕事であり、それぞれの企業、それぞれの経営者によって、最適な人事戦略は異なります。資金を最優先すべき企業もあれば、社員の成長を重視すべき企業もあるでしょう。私は、あらゆる可能性を考慮した上で、クライアント企業にとって最適な人事戦略を提案することを心がけています。
起業以来、私は多くの挑戦をする経営者と出会い、彼らの情熱に触れてきました。彼らは皆、社会に貢献したい、未来を変えたいという強い思いを持って事業に取り組んでいます。しかし、経営の難しさに直面し、苦悩している経営者も少なくありません。私は、そんなチャレンジャーである経営者たちを、人事という側面から支えたいと思っています。そして、同時にチャレンジャーの一番の伴走者である従業員の方々にも幸せになってもらえる人事戦略を支援したいと考えています。
このような考え方になったのは、一社目の重工メーカーを退職してから人事を担当したスタートアップ2社での経験があったからです。このスタートアップで私は人事業務はできていましたが、経営視点での提案ができていなかったと思っています。もし当時の私が深い経営視点を持っていたら、経営者にも社員にももっと幸せになれる道を提案できたのではないかと考えると今でも悔しい気持ちでいっぱいになります。
このような悔しい経験があったからこそ、私は同じようなことを繰り返したくないですし、同じような境遇にある会社を人事の力で守りたいと考えています。